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「それであの、プロポーズの、返」
「この、セーター」
「あ? ・・・うん。ありがとう、俺の好きな色」
薄い水色のセーターは、私が車の助手席に置きっぱなしたクリスマスプレゼント。3日迷って選んだ、初めて買った男物セーター。
「嬉しい、気に入ってくれて」
「指輪は? 気に入った?」
私は手の中で輝く指輪に視線を戻す。
キラキラと、汚れを寄せ付けないような美しい光。
「素敵。・・・・私には、勿体ない」
先程までの濁った私の心を、洗い流してくれるだろうか。
ソレをそっと彼が抜き取って、私の左手の薬指に嵌めた。
涙の止まった私の頭を撫で、ゆっくりと彼の胸に寄せてくれる。
「奥さんに、なってくれる?」
「――はい。私で、よければ」
「はぁぁ、・・・・良かったぁ」
温かな彼の胸で、私はまた涙ぐむ。
ごめんなさい彼のお母さん。
ごめんなさい神様。さっきまでの悪態を許してください。
ごめんなさい、サンタさん。これから良い子にしますから。
精一杯、彼を幸せにしますから。
「メリークリスマス、・・・・大好き」
「メリークリスマス。愛してるよ」
ごめんなさい、世界中の人達。
皆さんの幸せを祈ります。
―― I wish you a merry, happy Christmas.
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