blue heart

10/42
前へ
/42ページ
次へ
「サーモン丼がオススメです!」  はきはきとした口調で、メニュー表を指す。店員の女性が彼女にお冷を出し、「ご注文はお決まりですか?」と僕らに訊ねて来た。どうやら、この日本食レストランは店員も日本人らしい。そこまで推すならと、「じゃあ、サーモン丼で」と、彼女オススメの品を頼んだ。彼女は僕の顔を見て、満足そうに微笑んだ。 「俺はカツカレー」  ケイは続けてそう答えた。隣に座る彼女を再度確認すると、少しムッとした表情でケイを見ていた。ケイは惚けた様子で、お冷のグラスに手を伸ばしていた。僕は思わず吹き出しそうになる。  彼女は背負っていた彼女の身長位ありそうなバックパックを床に下ろすと、メニュー表を覗き込んで、店員を呼んだ。 「きつねうどんで」 「いや、サーモン丼じゃないんかいっ!」  彼女の注文に、思わずケイが突っ込んだ。 「お兄さんたち、日本人だよね? 観光? 珍しい、男二人旅なんですね。目的地は?」  それぞれ注文した料理がテーブルに並ぶと、彼女が再び話掛けて来た。 「昨日、クイーンズタウンに降り立って、今日はクライストチャーチまで行く予定だよ。最終的には北島に向かうんだ」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加