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「しかし、果てしなく同じ風景が続くよな。何かの陰謀で、同じ所をぐるぐると回わらせられているんじゃないか? 俺たちがいるのはループの世界で、永遠に目的地に着かないんだ」
「何かの陰謀って?」
「悪の組織的な? いたいけな日本人の俺たちが、ランダムに選ばれてしまった訳。どこを見ても牧草地、羊だらけ……ブメェエエエ……ブメェエエエ」
ケイの羊の鳴き真似が無駄に上手くて、僕は思わず吹き出した。
「見てごらん、あそこにいるのは羊じゃなくてアルパカだよ。俺たちは道なりに進んでいるし、ループの世界を彷徨ってる訳じゃない」
「アルパカが一匹、アルパカが二匹……なぁ、道路もずっと真っ直ぐだし、景色も変わり映えしないから、眠くなってこないか? 何か音楽かけるか? 俺チョイスで」
「いいねぇ、頼むよ」
ケイはチョコバーを齧りながら、車に繋いだオーディオプレーヤーを操作する。
「じゃ、奥田民生ね」
「渋いチョイスだね」
「……再生っとな」
軽快なイントロが流れると、ケイは頭を振ってリズムを取り出した。開けた窓から外に向かって、オーディオを掻き消すような大声で、歌い始める。
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