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「いや、お前が歌うのかよ」
男二人を乗せた軽自動車は、牧草地に挟まれた道路を進む。
僕は交換留学生として、半年程、オーストラリアに留学した。学生ビザで就業時間は決められていたけれど、勉強の合間のアルバイトでコツコツ貯めた金と、元々留学のために日本で用意していた貯金の残りを遣って、日本に帰る前に、隣のニュージーランドへ旅行することにした。
ケイと出逢ったのはオーストラリアで、彼は同じシェアルームに住むルームメイトだった。シドニーの中心部にある高層マンションの一室を、外国人向けのシェアハウスとして、貸し出していた。三部屋ある内の一室を二人でシェアする。そこではアジア系とヨーロッパ系の男六人が暮らしていた。同じ日本人ということで、僕とケイは同室だった。
学生の僕と比べて、彼はワーキングホリデーでオーストラリアに訪れていた。シドニーにしか滞在していない僕とは違い、彼はシドニーとは反対側に位置するパースから入り、各地を旅して回っていた。アリスプリングやケアンズ、それにゴールドコーストと経由してシドニーに辿り着いたらしい。
目的は違ったが、同い年で、日本で住んでいる所も比較的近いということから、僕たちは仲良くなっていった。
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