blue heart

7/42
前へ
/42ページ
次へ
 旅行会社のパンフレットなどで、写真がよくピックアップされるニュージーランドといったら……の観光地だ。 「うわぁ、やっと着いたぁ」  車から出ると、ケイは空に向かって両手を突き上げ、大きく伸びをした。その場で軽いストレッチを始める。僕も後部座席のリュックを引っ張り出し、車のロックを掛ける。駐車場には、大型のバスが何台も停まっていた。観光客だろう団体の中には、日本人のツアー客らしき人達もいた。  頭上には雲一つない真っ青な空がどこまでも続き、季節は夏だが、日本と違って梅雨がないので、湿気もなく、空気が澄んでいて、過ごしやすい。  僕らはスマホのカメラを掲げながら、湖畔の周りを散歩した。 「有名なルピナスは残骸しかないね」  ケイは辺りを見渡しながら、かろうじて花を咲かせている青紫色のルピナスを写真に収めた。僕が手にしているポケットガイドには、湖をバックに咲き乱れるルピナスの写真が掲載されていた。 「写真と全然違う」 「時季的に、花が終わりみたいだね。まだ咲いてる花があるだけでも、運がいい」  不満気なケイを宥めた。 「ちなみにこの本によると、ルピナスは外来種らしくて、場所によっては伐採するところもあるらしいよ」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加