blue heart

9/42
前へ
/42ページ
次へ
「へぇ、花を入れて名物みたいになってるのに? 変なの」  思ったことをすぐ口にするケイは、ルピナスをじっと観察していたかと思ったら、立ち上がり、湖畔に建つ石造りの教会へと駆けて行った。 「フォトスポットを回ったら、飯にしよう。マジで腹減ったわ」  ケイの意見に頷き、彼の背中を追った。  テカポ湖の近くにある日本食レストランに入った。学食の食堂のように、長テーブルが並ぶ席に、ケイと向かい合って座る。 「テカポ湖の水って、何で温泉の素を入れたみたいな色なの?」  メニューを見ながらケイが訊ねる。 「氷河が削った岩石の粉が溶け込んでいるみたいだよ。By ウェキペディア調べだけど」 「さすがアオイちゃんだよ。ガイドいらず」  ケイの質問にスマホでさっと調べて答えると、感心したような表情で、僕を見つめる。 「さすがって、書いてあるのを読んだだけだけど……」 「何にするかな? 結構メニューの種類があって迷うな」  僕の呟きは聞こえなかったらしく、ケイはメニュー表を再び覗き込んだ。 「ここ、サーモン丼が美味しいんですよっ!」  同世代位の日本人女性が隣に座ったと思ったら、満面の笑みで僕らに話掛けて来た。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加