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冬の寒さも消え始めそれに伴い春の兆しが伺える3月、卒業式。空は赤く染まり始め誰もいなくなってしまった教室に一人の卒業生がいた。だが、それはとても悲しくて切なくて苦しそうで。
東雲 徹(シノノメ トオル)彼は同級生に恋心を抱きそして、ほんの先程その相手に思いを告げたがそれは見事に砕け散った。表情からは後悔のようなものが見えているようだった。
それもそのはず、彼東雲 徹はある大きな弱点を抱えていた。それは、同性つまりは男性しか愛せないのである。
遡ること二年前。東雲が高校に入学してきた頃である。入学式前日で風邪をこじらせ入学式に参加出来ずに自己紹介もできないまま初めて教室に向かった東雲はまさにクラスから浮いているようであった。
彼が初めて教室に入るとクラスはたちまち沈黙に陥る。そして、東雲の方を見ながら何やらひそひそと話す生徒達。
「あのこ、入学式からサボってたこじゃん」
「風邪ひいたらしいよ」
「可哀想に、運悪すぎでしょ」
あたりを見渡すと、もう既になんとなくクラス内でのグループのようなものができてしまっているようで、彼はただ俯いて自分の席に座り一人でこのなんとも言えない空間を耐えきるしかなかった。
「よっ、東雲 徹だよな?」
そんな時、何もすることがなくただ俯いていた彼に声をかけたものがいて顔を上げてみると、ブレザーの襟には学級委員長というバッチがつけられた男子生徒がいた。その容姿は男性から見てもカッコイイと言わざるを得ないようなもので東雲から見てもそれは変わらなかった。
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