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「優馬?どうしたんだよ……」
「あのさ……」
佐野が重そうにしていた口を開く。
「俺、高校卒業したらしばらく海外に住むことになりそう」
それは東雲にとってはとても重大な報告だった。なんでも、親の務めている企業が成功したらしく規模を海外にまで広げる要員として佐野の親が選ばれたらしい。
このままでは何も言えないまま終わってしまう。卒業したらもう一生会えない……?
"そんなの嫌だ このまま終わるくらいならいっそのこと砕け散って……"
そうして、時は進んで卒業式、友人との別れで涙を流す人が多くいる中、一通り卒業式を終え東雲は教室に佐野を呼び出した。
"どうせもういなくなってしまうのだから、嫌われてもいい。だからせめてこの気持ちだけ……"
と、そこで教室の扉が開きそこには東雲が待ち望んでいた人物、佐野が姿を現した。
「ごめんごめん、まったか?」
「いいや、待ってないよ」
そして、少しの時間、沈黙が流れるその時間は実質的には数秒と短かったものの東雲にとってはとても長いものに感じた。
「あ、あのさ」
「なんだ?」
「海外に行くのはいつから……なの?」
「1週間後だな。……なんか、寂しくなるな」
「そうだな……」
「なぁ俺、優馬に伝えたいことがある」
「な、なんだよ改まって」
真剣な顔で言う東雲に佐野は少してれのようなものを感じて少々笑いながら言った。
それでも東雲はなんの変化も見せず、より真剣さを増して静かに、息を吸う。そして……
「俺、優馬のことが好きだ。男として」
告げた。そこには先ほどとは比べ物にならない重い沈黙が伝わる。
「は、はは…… っあはは……」
声に出した笑ったのは東雲の方だった。佐野は未だに何を言われたのかわからないような呆然とした顔をしている。
「知ってる、知ってるよ…… 無理なのはわかってるんだ。ただもう会えないかもって思ったら伝えたくなっただけ」
「徹……」
「ごめんな、いきなりこんな話して引いたならそれでいいから」
「徹!」
「なんだよ……」
「いや、……何でもないよ 俺一旦帰るわ」
そうして、佐野は静かに教室に去った。そして、冒頭の場面に戻る。
"俺ってば、何やってんだか…… 最後に親友困らせてどうするんだよ"
彼の目からは涙が流れていた。
"もう、人を好きになっても告白するのはやめよう"
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