再会

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東雲が告白をしてから数年が経ち彼はもう立派な社会人となり、大手企業に務めるようになっていた。 それからというもの、彼は一度も誰かと付き合うようなことは無かった。それは彼の中に未だに佐野の存在が残っているから。度々、夜に佐野のことを思い出しては必死に記憶からその大切だった佐野の存在をかき消そうとする東雲。そして彼はそんな悲しさや苦しさを快楽で紛らわせようと何度か自分と同じ種類の人といわゆる"性行為"をしていた。 そんなある日のことである。いつも通り会社に出勤する東雲の足取りはなんとなく軽く感じた。それもそのはず、入社して初めて彼に大きな仕事が当たったのだ。社内でも限られた人たちしか選ばれないものに自分が選ばれた。彼は、漏れそうになる笑みを抑えながらも社内に入る。 「徹くん、おはよう」 「おはようございます、荒谷さん」 社内に入ってきた東雲を見て挨拶をしたのは彼の上司、教育係にあたる荒谷 京介。また、彼も今回の大きい仕事に直接携わることになっている。 「徹くん、嬉しいのはわかるけどあまり調子乗らないようにね…… 今回の仕事の主任は厳しくて有名な人だから」 「大丈夫ですよ、ちゃんと切り替えますから」 「だといいんだけど」 そうして二人は一緒に今日の確認をしに自らのオフィスへと入る。妙に浮き足たって嬉しそうにしていた東雲だが、その間もなく彼はとんでもない運命の出会いを果たすこととなる。が、そんなこと彼はまだ知る由もなかった。
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