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その日の昼のことである。東雲の務めるオフィスの会議室にはおよそ50人近くの人たちが集まっていた。まもなく、これから始めることとなるプロジェクトの会議が始まろうとしていた。会場中がざわめく中、進行役の役員のアナウンスによりそれは一斉に静まる。
「これより、新プロジェクトの挨拶及び会議を開始します。まず最初に今プロジェクトの主任に挨拶をしてもらいます。」
進行役のアナウンスの合図で席を立った人。おそらく彼が主任なのだろうが東雲は彼をどこかで見たことのあるような気がしていた。嫌な予感がする。そんな感情をよそにその人は自己紹介を始めた。
「主任をつとめさせていただきます佐野 優馬です_______________」
その声、名前を聞いた瞬間、驚きのあまり東雲は思わず勢いよく席を立ってしまう。全体から冷たい視線を浴びるとともにびっくりしたような顔で東雲を見つめる佐野。
「た、大変失礼いたしました」
焦った東雲は静かにそういうと恥ずかしそうに再び席についた。
「え、なに徹くん 佐野さんの知り合いなの」
「い、いえ、高校の同級生で…… すみませんでした。」
突然のことに困惑気味に東雲に問いかけた荒谷であるが、もちろん東雲は高校生の時の失恋相手です。なんて言えるはずもなく言葉を濁してそう告げた。
荒谷は焦っていた。今回佐野とは直接何度も関わることになるだろうし会話も何度もするだろう。
俺、仕事やっていけるんだろうか……
まだ何もしているわけでもないのに気分はどんよりと重くなってしまった東雲であった。
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