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その上、中を探るしかないと先陣切って歩き出した寺町に、訝しげな顔をする。今まで乗り気ではなかった寺町が、こんな風に積極的なのはおかしい。
だがどちらにしても、ここで手を拱いているわけにはいかなかった。
聖司郎に術を発動させて、城の奥に歩を進める。
やはり城の中は全くの無人だ。ヴァンパイアたちは城を棄ててどこかに逃げたのか。それとも完全にその気配を絶ち、この城の中で自分たちを手薬煉引いて待ち構えているのか。
ひどく緊張した面持ちで、一枚の大きな扉の前に立った。
手間隙を掛けたと一目見ればすぐに分かる、手の込んだ彫刻を施した一枚物の扉。恐らく大広間に続くであろうその扉を開けたのは京極だ。
途端にふわりと空気が変わった。陽も射さぬ石畳の廊下とは違い、燦々と陽光の降り注ぐそこはとても暖かな空気に満ちていたらしい。扉を開けたことにより、一気にその空気が廊下に流れ込んでくる。
その空気と共に光の欠片が飛び込んできて、思わず目を細めた。
視線の先にはヴィクトールとレンツが、悠然と立っている。その姿を認めた途端、どす黒い感情が一気に頭を擡げる。それは一瞬で体中を駆け巡り、殺意さえ芽生えた。
「ヴァンパイアどもの姿がないと思ったら、お前の仕業か。白銀のヴァンパイア」
聖司郎の声が、広い広間に反響する。
この男は、どこまでこの男は自分たちの邪魔をするのか。拳に爪が食い込むのも構わず、きつく握り締めた。
しかしここに始祖二人が集まっているなら、好都合だ。一気に彼らを滅してしまえば、後顧の憂いは何もなくなる。
コピーたちがどこに隠れているかは知らぬが、始祖さえ倒してしまえば彼らなど烏合の衆だ。簡単に潰せる。
そう思い、鯉口を切って刀を構えたのは京極だけだった。それを見て、ようやく悟る。
「どういうつもりだ?」
どうやら自分以外は、すべて敵らしい。こんなことは有り得ない。自分たちは人間で、相手はヴァンパイアだ。人間ではなくヴァンパイアと手を結ぶなど、あってはならないことではないのか。
なのに寺町は全く動じることなく、口を開いた。
「俺はこんなやり方には反対だ」
「……、おめェか?奴らに情報をリークしたのは?」
それは単なる確認だ。彼は以前から、ずっとこのやり方に反対していた。しかしだからといって、敵であるヴァンパイアと手を結ぶなど言語道断であろう。
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