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それなのに彼は是とも否とも答えを返すこともなく、更に言い募った。
「俺たちには言葉がある。もう一度腹を割って話し合うべきだ」
「何言ってやがる!そんな必要はねぇ!!ヴァンパイアは一人残らずぶっ殺す!!」
それこそ、今更だ。
誰も姉の話など聞かなかった。自分の言い分も聞いてくれなかった。
それなのに何故、今頃になってそんなことを言うのか。
憎悪にも似た感情が込み上がってくるのを止めることも出来ずに、思わず叫んだ。だが次に言い放たれた寺町の台詞に、言葉も返すことも出来ずにその場に立ち尽くした。
「それは単なる、お前の私怨じゃないのか?」
嗚呼、気付かれていたのか。
そうだ。これは完全なる私怨だ。いや。それどころか聖司郎とヴィクトールからしてみれば、単なる八つ当たりにしか過ぎない。
そうと分かっていても尚、この憎悪は止まらないのだ。
クリストフはもうこの世にいない。その存在さえ消え去れば、この感情も儚く消えてなくなるのだと思っていた。
なのにそれはなくなるどころか、更に膨らむばかりで京極を支配していく。
だからもう、進むしかないのだ。自分はこの感情に流されていくと決めたのだから……。どこに辿り着くのかなんて分からない。例えばそれが破滅なのだとしても、姉のために自分がしてやれることはこれしか残されていなかった。
「分かってんだろうな?これは立派な反逆行為だぜ」
「陛下なら、話せば分かる」
それが悔し紛れから出た言葉だとは、自分でも分かっていた。
誰が正しいのか。もうそんなことはどうでもいい。ヴァンパイアは一人残さずこの世から抹殺する。
それが自分の中の、たった一つの正義だ。
「ならおめェたちはそこにいろ!金色は俺が仕留める!!」
そう叫んだと同時に、一気に間合いを詰めた。そのまま愛刀を抜き、レンツに斬り掛かる。
レンツはそれを予想していたのか。彼の持つ剣で、難なく受け止められた。それが切っ掛けだったかのように、隣では聖司郎がヴィクトールに神刀を向ける。
そうだ。それでいい。他の誰でもない聖司郎がヴィクトールを倒せば、このどす黒い感情は少しでも薄まるだろう。
そんな淡い期待を胸に、聖司郎とヴィクトールの勝負を目に留めながら、レンツに刃を振り下ろす。
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