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ヴィクトールもであるが、レンツの剣の腕もたいしたものだった。京極でさえ、攻めあぐねている。
その最中のことだ。突然聖司郎が血を吐き、その場に蹲ったのは……。
とうとう限界が来たらしい。医師からは既に内蔵機能が著しく低下しており、戦闘に耐え得るだけの体ではないと宣告されていた。
それでも聖司郎は、立ち上がる。立ち上がって、ヴィクトールに再び神刀を振り翳す。
その姿に、ほくそ笑んだ。そうだ。そのままヴィクトールをその手で葬ればいい。かつてずっと追い求めていた最愛の男を、自らの手で……。
ヴィクトールとて、本望だろう。恋焦がれていた聖司郎の手に掛かるのだ。
そう思いながら見ていたその目の前で、あろうことかヴィクトールは自ら聖司郎の神刀に貫かれ、そのままその体を抱きこんでしまった。
一体何が起こったのか。京極でさえその動きを止めて、彼らを見る。レンツも同様だったのだろう。唖然と立ち尽くしていた。
必死になって抱きついてくるヴィクトールを、聖司郎はどうにかして引き剥がそうとする。しかしヴィクトールは、決してその腕を放そうとはしなかった。
「お前は私の花嫁だ!私はお前だけを愛している!愛しているんだよ!!」
そしてあらん限りの力を振り絞るようにして、そう叫んだ。まるで慟哭のように……。
「愛しているんだよ。聖司郎……」
無駄だ。そんなことをしても、聖司郎はもう元には戻らない。
人間と、ましてや魔導師とヴァンパイアが結ばれることなど、決して有り得ないのだから……。
なのに、それは起こった。
まさに奇跡というしかないその瞬間を、確かに己の目で見たのだ。
「ヴ……ィ!?ヴィ!!」
それはかつて聖司郎が、ヴィクトールを呼んでいた愛称だ。
引き剥がそうとしていたその腕がゆっくりとヴィクトールの背に回るのを、呆然と眺めた。
これはなんだ?こんなことはあってはならない。
動けない京極の前で寺町が聖司郎を押し退け、大宮ガヴィクトールの治療を施し始めた。その姿にようやく我に返る。
「おめェら!何やってんだ!?」
このまま放っておけば、少なくともヴィクトールだけでも消滅させることが出来る。それなのに、何をわざわざ治療をするのか。
しかしそう激昂すると、他の隊士たちは二人を庇うようにして立ちはだかる。それに更に血が上った。
「もう止めようぜ。京極」
「烏丸!」
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