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拍子抜けというのはまさにこのことだろう。
亡くなった修斗からのクリスマスプレゼントだと思った。もしかしたら会えるかもしれないなんて期待まで抱いた。
ただの勘違いだった。それでも大きな落胆がなかったのは、迎えてくれた人たちの暖かさのおかげかもしれない。
「ほら、駆くん、飲んで飲んで」
プレゼントを拾い、東京に持って来た守屋さんが、駆のグラスにビールを注ぐ。もうすっかり顔を赤くした駆は「もう飲めませんって」と言いながらも上機嫌でビールを煽った。
「それにしても東京人ってのはハンサムだねぇ」
もう80は越えるだろう守屋さんの母が駆の腕をさする。そう言う褒め言葉に「光栄です」なんて感じの良い笑顔を返せる辺り、言われ慣れているのだろうなと想像がつく。
「小夏さんもどうぞ」
隣に座っていた真面目そうな男性にオレンジジュースを注がれる。少し前に「帰れなくなったら困りますから」と酒を断ってからオレンジジュースを注いでくれるようになった。彼こそがプレゼントの落とし主だ。
「それにしても驚きましたよ。まさか落としたプレゼントがクリスマスイブ当日に帰って来るなんて。しかも持って来てくれたのが小夏さんって名前なんですから」
彼は嬉しそうに笑い、自分のグラスに入った烏龍茶を飲み干した。
守屋さんの隣家の柳田さんは、3年間交際した小夏さんにプロポーズを決意した。
ネックレスを入れた紙袋の中に「Merry Christmas!小夏。今年の2人の記念日はここで過ごしましょう」と言うメッセージと彼女が兼ねてから行きたがっていたホテルの名前と住所を書いたカードを入れ、クリスマスイブの今日、渡すつもりだった。
12月27日が2人が付き合い出した記念日だそうで、その日から2日間ホテルに宿泊し、そこでプロポーズをしようと言う計画だったらしい。
「プレゼントがないことに気付いて、一度は諦めたんです。今年はクリスマスプレゼントはナシにして、27日に婚約指輪だけ渡そうって。でもまさか当日に戻って来るなんて」
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