1人が本棚に入れています
本棚に追加
守屋さんの家で散々酒や料理をご馳走になり、そろそろ失礼しますとコートを羽織る頃には午後6時を越えていた。
昼過ぎに着いていたことを思うと、長々と6時間近くお邪魔してしまったことになる。泊まっていけばいいと言う厚意を丁重に辞退し、玄関先まで見送りに出てくれた守屋さんとその母に頭を下げる。
駅に向かって歩き出してすぐ、駆はまだ赤みの残る顔で微笑んだ。
「何かいいな、こう言うのって」
「あったかいね」
小夏の心もじんわりと暖められていた。こんなクリスマスイブも素敵だと心から思えた。
「こんな機会ももうないだろうし、トップシークレット教えてやるよ。もう時効だろ」
駆は前に広がる道を見つめて笑う。
「時効?」
「14歳の時さ、修斗と小夏と俺でクリスマスプレゼント交換したの覚えてるだろ?」
「もちろん」
「あれさ、俺が修斗のために計画したんだ」
「え!?」
驚いて大きくなった声が周りを取り囲む畑に響く。あまりに響くので反射的に口を押さえる。
「あいつさ、見てると焦れったかったんだよ。いつまで経っても気持ち伝えようとしないから。何かキッカケになればいいと思って計画したのに、あいつはそれに乗らなかった。あの頃小夏がネックレスを欲しがってるの知ってて、全然関係ないマフラーなんてプレゼントしやがった。マジで意地っ張り」
呆れたように笑う駆を見て、小夏はその場に足を止めた。今の言い方はまるで……。
最初のコメントを投稿しよう!