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「あいつはもう自分で伝えることできない。だから俺が代わりに伝えてやる。修斗はお前のこと恋愛的に好きだったよ。ガキの頃からずっと」
目頭が熱くなる暇もなく、涙が溢れた。それは次々に頬を伝い、地面に落ちる。
「一回あいつに聞いたことあるんだ。小夏のこと好きなのかって。あいつは認めた。けど、気持ち伝えようとはしなかった。マジで焦れったかったな。チャンスやってんのにあいつ全然動かないんだもん」
涙で滲んで駆が見えない。耳に届く声が先程よりワントーン下がった。
「だから今回は絶対に修斗だと思ったんだ。10年越しにプレゼント渡しに来たと思ったんだ。何だよ、やっぱり違うのかよ」
頬を伝う涙は拭っても拭っても零れて来る。こんな風に人前で泣くのはもう随分久しぶりのことだ。
「すげぇ……」
息を飲むような声が聞こえ、小夏は駆を見た。涙で滲んだ視界の中で彼は空を見上げていた。それに習うように空を見上げ、小夏もまた息を飲んだ。
頭上に広がる藍色の空に、絵の具でさっと一塗りしたように星の河が出来ていた。その周りを大小の星が飾り付ける。
ふと3人で過ごした最後のクリスマスを思い出す。あの日、星がぽつぽつと輝く東京の空を見上げて、修斗は言った。
「俺さ、星って結構好きなんだよね。いつか満点の星空って見てみたい」
小夏は言った。
「いいね! 私も見たい! 絶対に行こう!」
駆は言った。
「じゃあ来年のクリスマスイブは満点の星空の下でプレゼント交換するか!」
結局それは果たされることのないまま、もう10年が経ってしまった。
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