〔小夏へ〕

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冬の早朝は寒い。夜中の間中、ゆっくりと時間をかけて冷やされた空気が満を持して街中に流れ込んでいる。 街を見降ろすことの出来る公園のベンチで、小夏は空に向かって小さく溜息を吐いた。 清々しいほど晴れ渡った薄い水色の空は一瞬白く濁りはしたものの、またすぐに元の姿を取り戻す。お前の思惑になんて邪魔されるものかとでも言いたげに、今日を楽しみに生きてきた多くのカップルの輝かしい朝を照らしている。 12月24日、クリスマスイヴ。 ただでさえ憂鬱になる年間行事が、何と今年は日曜だった。人によって明暗の別れる行事なのだからせめて平日にやってほしいものだが、そんな思いが叶うわけでもない。 仕事があれば少しは気が紛れると言うものだが、小夏が今、バイトをしているアクセサリーショップは土日祝が休業だ。 とくに予定もなく、カップルだらけの街中に1人で出掛ける勇気もなく、小夏は公園のベンチに佇んで、代わり映えしない街の景色を眺めている。 日曜の午前7時に。 せっかくの休日にこんな早起きをするつもりは全くなかった。本当なら今頃布団にくるまって、昨夜のテレビ番組で見た高級チョコレートをたらふく食べる夢でも見ているはずだった。 目が覚めてしまった。いや、冴えてしまった。 理由はわからない。けれど、寝ていることが苦痛になってしまったので、仕方なく近所の公園まで散歩がてらやってきたのだ。
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