〔小夏へ〕

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「俺もさ、これ捨てられないんだ」 駆は首のタオルを引っ張ると、目の前で大きく広げてみせる。スポーツブランドのロゴが入った白と黒のシンプルなタオル。随分年季が入っているとは思ったが、それがあの日のクリスマスプレゼントだとは思わなかった。 「それ、修ちゃんからの?」 ぽろりと零れ落ちた修ちゃんと言う響きがやけに古めかしかった。毎日何十回、いや、何百回と口にしていたあの頃からあまりに遠く離れたところまで来てしまったと言う事実を実感し、息が詰まる。 「そう、あいつからの」 駆はそれだけ言うと、慈しむようにタオルを眺めた。 中学2年生のクリスマスイブ、駆と小夏、そして修斗は幼馴染み同士、3人でクリスマスプレゼントの交換をすることになった。それまでそう言うことを積極的にやるようなタイプではなかった駆が突然やろうと言い出したのだから、その衝撃は未だに覚えているほどだ。 どんなことでも楽しめるタイプだった修斗は面白そうだと話に乗ったし、当時から修斗に恋愛感情を抱いていた小夏ももちろん頷いた。 そして普段から溜まり場にしていたこのベンチでプレゼント交換をしたのだ。それが3人揃った最後のクリスマスイブになるなんてこの時の小夏には想像も出来なかった。
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