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……面白い。コイツにある力を与えて楽しむとしようか……
月読命はニヤリと冷たい笑みを浮かべた。右手をソレに翳す。右手の平から月のような柔らかな光が溢れ出した。その光はソレに向かって伸び、包み込む。彼はソレに話しかけた。
直接言霊を発すると言うより、脳内に直接響く、と言う表現が適当であろう。
『お前に力を与えてやろう。これよりお前は、不老不死、かつ、長い年月を得て神通力を身につける。お前は海の底でしか本来生きられない生物だが、眠るときにさえ海水に浸かれば普段は陸で生活が出来、これから誕生する人類の言葉を操り、伝心
《テレパシー》として会話が可能だ。
更に、人類を破滅にも繁栄にも導く力を与える。長い年月を得て神通力を身につけた暁に、ある男に出逢う。その男の一族の『家宝』として、大切に祀られる事になろうぞ。
お前はその後、「タマヨリヒメ」の魂を宿した女に仕え、後にその女の息子に仕える事になる。その息子は……』
彼はそこで言葉を切ると、ニヤリと笑った。
『八百万の神きっての好きモノ男……いや失敬、もとい、八百万の神きってのモテ男「大国主命」の魂を宿す。存分に力を貸してやるがよい』
と言い終わると光が消え、意味ありげな視線をソレに向ける。
『お前に名を授けよう。真の名を「花笠海月」通り名を「花笠海月」と名乗れ。
追って指示は出す。それまではゆるりと気ままに過ごすが良い』
と指示を出すと、シュッと消えた。
穏やかな春の陽射し。緩やかな海。花笠海月はゆくらーゆくらと漂う。
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