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『……男よ! お主に美しい娘がおるな?……』
……なるほど、これが伝心か。あらゆる言語を理解して伝えられる力……
初めて使うその力に驚きつつ、自然に男に話しかけていた。
男は直接脳内に響く凛とした声に驚愕した。そして歓喜した。
「な、何と! 言の葉を操る不可思議な力! 神の使いに違いないわい」
そのまま邸に持ち帰る事にした。
『待て! 我は眠る際に海水が必要じゃ。欠かさず用意しておけ。我が名は花笠海月我を祀る一族に栄華と繁栄を約束する有難き神の使いなり』
「何て有難い。真面目に生きて来た甲斐がございました」
男涙ぐみながら大切に持ち帰り、そのまま一族の家宝とした。
男には類い希なる美貌の娘が居た。
……なるほど、この娘がタマヨリヒメの魂を宿す……
海月は確信した。
かくして、その娘は美貌と『家宝』を片手に、生き残りと出世をかけて入内し、帝の寵姫を目指す事となったのである。
「任せて、父様。必ずや帝の寵愛を勝ち取り、皇子を生むわ! 海月様と作戦会議はバッチリよ!」
自信に満ちた眼差しで父親を真っ直ぐに見つめた。
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