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塾のない月曜日、学校へ行くと、サッカー部の連中が楽しそうに歩いて来た。
真守の姿はない。
「おお、高樹ィ、久しいじゃん」
「何、お勉強?」
「まぁ、あ、真守は?」
「真守?髪切りじゃね?」
「え?あれ、野球部に居たじゃん、コーチの人、航平となんとか言ってたし」
「ああ、靴買いに行くって、デートだろ」
「なんだ、タカッキーふられたな」
「フラれたって、なんだよ。今から何?」
「ミニゲーム参戦。お前も来る?」
「いや…」
「そ、んじゃまたなぁ」
「ああ」
部活が終わっても、なんとなくつるんでいる。大学進学希望は4人、あとの12人は専門と就職。真守も専門学校に決めているようだ。
航平とデート…。
いつも、真守が誘ってくれた。
歩夢も行こう。
歩夢も一緒に。
歩夢もやろう。
俺が仲間で居られるのは、真守が居るからだろうか。
真守が居なくても、誰か俺を誘ってくれただろうか。
彼らを見送りながら、ぼんやりそんなことを考えた。
夕方、思い切って電話をした。
ツーコールで出る前に切れ、掛け直すと
「今電車の中」とだけ言って切れた。
未読のメールの下に、後で電話すると送った。
無論、電話も返信もなく、2時間ほどして、もう家に帰った頃かと電話を掛けた。
「真守?俺、今電話いい?」
「ああ、何?」
「ん、久しぶりだなと思って…元気にしてたか?」
「普通」
「今日学校で、櫻井とか笹野とかミニゲームやるって会ったんだけど」
「ああ」
「真守居なかったから…」
「なんか用?」
「用っていうか、用はないけど…」
「用がないなら切るよ」
「え?」
電話は一方的に切れた。
俺はえ?と言ったまま、暫くツーツーという音を聞いていた。
電話を掛けて来るのは大概真守の方。
「何か用か?」と尋ねるのは俺で、
「用はないんだけどさぁ」と話し出す。
そのどうでもいい話を聞き、
「用がないなら切るぞ」と言うのは俺で、
「ああ、ごめんごめん、じゃ又明日」
と真守が言う。
いつもそう。それなのに、なに?今の。
真守からしっぺ返し受けている。
抑揚のない声が耳に残る。
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