デオキシス

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枕元にスマホを置いて寝たが、真守からは何もなかった。 そして、長い時間塾の自習室に居たが、余り頭に入って来ない。 帰って夕食を食べ、少し祖父母と喋り、また机に向かう。 座っているだけで、頭の中ではずっと同じことばかりを考えている気がする。 いつもの真守と違う。 やはり、映画のことを怒っているのかもしれなかった。もう1カ月も過ぎてしまって、今更な話だが、謝っていないのが気に掛かった。 机の引き出しの奥から、DVDを引っ張り出した。 『裂空の訪問者』 ねだって買って貰ったのを覚えている。 パッケージの表にシールが挟んである。いつも持ち歩いていて、大分擦れてしまっているデオキシスのキラキラシール。 飽きもせず、繰り返し観た。ポケモンが好きだったのか、仲間を探しに宇宙から飛来したデオキシスが好きだったのか、ポケモンが苦手で心を閉ざす少年に自分を投影したのか、或いは、ただ、真守から貰ったシールの物語だったからか…。 何処に引っ越す時も必ず自分のバッグにしまった。 たった一つの宝物。 そんなこと、真守はもう忘れているんだろうか。 映画…誰かと観に行っただろか。もう一度誘ったら、行くって言うかしら? いつもみたいに笑って「行くよぁ」と。
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