デオキシス

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小さい頃の、どうでもいいようなことをあれこれ思い出し、なんだか寝付けなかった。 朝食の時、祖父が桜浜リゾートのプール券を二枚くれた。28日にゴルフ帰りに一泊するかもとコテージを取ったが、時間が大分早まったからキャンセルするような話を二人でしていた。 「ね、コテージって高いの?」 「いや、寝るだけだからな、キャンプやったりする連中が泊まるような所だ」 「それ、俺が使ってもいい?プールの後に。駄目?」 「いや、構わんよ。遊んで来るといい」 「ん、ありがとう」 勿論、真守を誘うつもりだ。 出掛ける前に電話をした。 「真守?おはよ。一寸いい?」 「ああ」 「俺、1個真守に謝らないといけないことがあって…ずっと気になってて…」 「何?」 「映画…あの約束した日、家のことで一寸ゴタゴタあって、真守、そのこと怒ってるんだろ?埋め合わせするから、今度…」 「いい」 「え?」 「いつの話だよ。埋め合わせなんかいいから…じゃ、切るよ」 埋め合わせなんかいいから。と言った後の溜息が、耳に貼り付いていた。 今、何て言われたんだ? 電話って、こんな簡単に切られるんだと初めて気がついた。 朝だから不機嫌だった訳じゃない。 昨日もそう、面倒くさそうな、俺とは話たくなさそうな… 俺、何かしたんだろうか。 映画をすっぽかした他に、真守からあんなにも冷ややかにされる何か。 怒っている真守の顔が思い浮かばない。 いつも、笑ってた。 「真守はいつも楽しそうでいいよな」 「なんだよ。楽しくちゃ悪いのかよ」 そう言って笑った。 俺の知ってるいつもの真守…。
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