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朝に夜に、また電話したら、空気読めよ。と言われそうな気がした。
真守の名前をタップするのが怖い。
どうして、突然、こんなことになった?
塾の帰り、迷った挙句、真守の家の前まで行った。
不意に、早端さんの言葉が浮かんで来たから。
「待たなくていいって言ってあげて…」
あの時は、何を言ってるのかわからなかったし、どうして俺が真守にそんなことを言わなきゃいけないんだ。と思った。
でも、もう待ってないのかもしれない。
俺のことなんて関係ないのかもしれない。
ずっと、そうして来たくせに。
いつも一人で居た。
いつさよならしても淋しくないように、特別な友達は作らなかった。
特別…
真守は…特別…
たった一人、俺の特別。
「真守?俺、今何処?家に居る?」
「ああ。風呂入るとこ」
「ん…じゃ、20分くらいしたら又掛けるから」
「ああ」
心臓がドキドキしている。
素っ気ない返事。言葉の一つ、呼吸の一つに、こんなにも緊張するなんて、思ったこともなかった。
自転車に寄り掛かって座り込む。
玄関をノックすれば、きっとお母さんが、にこにこ笑って出て来てくれると思う。
学校帰りによく遊びに行った。
いつも俺の分のおやつを用意してくれてあって、宿題やって、遊んで、帰りは送ってくれて、優しかった。他所のお母さんはこんな感じなんだな。と思った。
ぼんやり、そんなことを思い出す。
どうしてだか、この頃、そんな、普段思い出さない、思い出さないようにしているあれこれが、次々頭を過ぎって行く。
いつも、今のことしか考えないのに…。
俺らしくない。
スマホの画面が、少しづつ光を濃くしていく。
一人の時間、一人で待つことには十分過ぎるほど慣れているはずなのに、20分が長い。
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