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30分が過ぎてもう一度電話をする。
「真守?俺…」
「真守は只今航平とお風呂でHの真っ最中です。電話には出られませ~ん。お掛け直し…」
「馬鹿言って、人の電話に勝手に出んな。ああ、コミ、ん、今行く」
電話の向こうで笑い声が聞こえている。
他愛のないことを言って、楽しそうにしている様子が浮かぶ。
すぐにドアが開き、真守はタオルを首に掛けて出て来た。
随分久しぶりに会う。
こんな顔をしていたんだっけ…?
また、鼓動が速くなる。
「久しぶり…」
「ん、何?待ってたの?さっき言えばいいのに」
「ん、あのさ、プールのチケット貰ったんだけど…行かないかなと思って…これ」
「プール?桜浜?遊んでていいの?勝負の夏なんだろ」
「い、一日くらい…気分転換に…」
「気分転換…ね。なら、柏木とか柿本とか誘ってやれば?暑いし、なんか、桜浜まで行くのかったるくね?」
「そうだけど、どうせ閑にしてるんだろ」
「どうせ閑にしてるけど、明日は無理」
「あ、いや、あと少ししかないけど明日でなくていいんだ。都合のいい…いや、出来れば…」
28日と言おうとした時、玄関が開いて航平が出て来た。
「まぁ、コンビニ行くけど…あれ、歩夢じゃん、何?久しぶり」
「航平、航平っ、ついでに…あ、なんだタカッキィ、何してんの?お前も見てく?新着H…」
「そんなもん見ねぇよ。バカ。コミ、自分で行って来いよ。航ちゃん使うな」
「いいの。愛してるから。金、プリペイドな」
「はいはい、行って来ます。まぁは何か買って来るか?ポケットで溶けないチョコとか?」
「わはっ、あれはもぉ勘弁。航ちゃん、髪濡れてる。それ寒い。あのコンビニ冷凍庫並に寒いから、これ着てけよ」
三人の何気ない会話。
真守はチケットを口に咥えると、赤いチェックのシャツを脱いで、タンクトップの航平に着せている。
何気ない優しさ。
「んじゃ行って来るねぇ」
「あ、俺も帰る。じゃ、真守、また…」
「ああ、おやすみ」
「タカッキーおやすみぃ」
肩を組むようにして家に入る真守と小深山を見てから、自転車を引きずって歩く。
会話は途切れたままだった。
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