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「珍しいね。歩夢がまぁン家来るの」
「そう?」
「ん、いつもまぁがかまってんじゃん」
「あ、ん、最近は構われてないけど…」
「受験生だから気ィ遣ってんだろ」
「ん…」
「まぁは気遣いの人だからな。あれ?何、歩夢がそんな顔したら、まぁが可哀想じゃん」
「ん、なぁ、真守、映画のこと何か言ってたか?休み前の話なんだけど…」
「映画?歩夢と行くって?ああ、どうだっけな?足痛くてやめたって言ってたか…」
「足?」
「試験の頃だろ?バスケやってて、引っ掛けられて足痛がってたんだけど、親指ヒビ入ってたの。びっこ引いてたの覚えてない?」
「あ、ん…」
「コンビニ寄ってく?」
「いや、あ、ん、やっぱ寄る」
「この前さ、ポケットでチョコ溶けちゃって大騒ぎ。お子様かっつうの。手で溶けない、焼チョコ、こんなんだな」
航平は、チョコレートの棚の前で選んでいる。
溶けたチョコで手をベタベタにして騒いでる真守が想像出来た。
航平は優しい。そして、真守も。
幼馴染の二人は、きっとお互い空気のような存在。
優しい空気。
俺はなんだろう…。
「航平、俺帰るな」
「あ、うん。じゃ、また、気をつけて」
「ん、おやすみ」
にこっとして手を挙げた航平が、真守に見えた。
炭酸を籠に入れて、のろのろ自転車を走らせる。なんだか力が入らない。
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