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世間体を気にする祖母が、俺の同居を快諾したかはわからないが、落ち着いた環境で学びたいという孫の申し出、成長した姿に腫れ物に触るようだったが、今は随分と慣れた。お互いに。
そして、なんとなく空気の隙間というか、それ以上歩み寄れない、歩み寄らない距離がある。
とりあえず、食べる物、眠る場所、煩わされず学校に通えれば良かった。
そのために、俺は優等生の孫でいる。
祖父母が求めた夢や希望に応えきれずに出奔した母の代わりをやるつもりはないが、俺は、母が出て行った時のまま手付かずになった部屋に入った時、自分の過ごして来た15年間と余りに違う環境に愕然とした。
自分ばかり狡いじゃないか。
何が不満だったんだよ。
と。
17年前のカレンダー、高二の教科書、几帳面に取られたノート。クローゼットの制服。ウサギのぬいぐるみがぽつんと机の上に座っていた。
学校から帰って来るのを待っているかのように。
時の止まった部屋に風を入れて、少しづつ息が出来るようになった。
もう彼女の匂いはしない。
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