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真守に初めて会ったのは幼稚園、4歳、変な時期の入園だったと思う。隣の席で、
「まぁって呼んでいいよ」
とにっこり笑った鮮明な記憶。
ポケモン「デオキシス」のキラキラしたシールをくれた。
初めての友達。
真守の隣には航平が居て、三人で遊んだ。
多分、凄く楽しかったと思う。
そして、さよならも言えずに去り、1年半ほどして再び戻った。
その時は、真守の母さんがキッズサッカーに連れて行ってくれたっけ。
小学一年生の夏まで。
それから、短い間の転入、転校を三度した。
真守と同じクラスにはならなかったけど、いつも一緒に遊んだ。
いつも一緒に遊んで、いつもお別れを告げることなく、この街を後にしたのだった。
中一の3学期、先生が紹介する前に、真守は手を挙げて
「あゆぅ、此処此処」と笑った。
隣の席の女子を勝手に席替えさせて、俺を隣に座らせた。
サッカー部にも入らされた。
フラッシュバックする。
「まぁって呼んでいいよ」
と笑った幼い真守の顔。
この頃には、俺はもう誰かと仲良くなって、早く新しい環境に慣れて、とか全く考えないようにしていた。
いつまた引っ越すと言われるかわからない。居心地が良くて、仲良くなって、そうしたら淋しくて仕方なくなるから。
淋しい気持ちは、どうしようもなく膨らんで、爆発することを知っていた。
そんな奴らは、瞳の色が違う。空虚で、満たされたくて、どうでもいい何かを詰め込んで、存在をアピールしたくて、悪い方へと転落して行く。
「育ちよね」
それは俺に向けられた言葉ではなかったけれど、父兄会でひそひそ話し合う母親達から漏れ聞こえたひと言。
テメェらが育てたんだろうが。と思った。
好き好んで淋しい訳じゃない。
俺はいつも掌をきつく握りしめていた。
掌の中で淋しさを小さく握り潰すように。
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