彼の記憶

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 「なぜ彼が他の大学の、何の変哲も無いサークルにわざわざ顔を出しているのか」という点は、このサークルの七不思議の一つだった。  ただ、それは謎が多いという意味ではなく、彼について詳しく知りたがる人なんて誰もいないことに起因していた。  会話の種が尽きると、形式的に彼のことが話題に上がり、特に誰も掘り下げることなく棚上げされていくだけなのだ。  サークルのメンバーにとって、彼は一人の人間ではなく、事象の一つだった。  だから僕がそのことについて聞くと、彼は特に隠すことなく話してくれた。
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