第1章

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「こちらは今年発売された新モデルで人気の商品ですよ。 今なら特別に10万ぴったりでどうですか?」  加奈子は睨みつけるように時計を見て考え込んでいるようだった。 俺は店長の言葉に驚いていた。 箱に付属されている時計の説明書を手にとって言う。 「このブランドの最新モデルが十万だって? これ本当は30万はするものだぞ。 しかも、 使いやすさやデザインが人気で手に入れるのだって難しいはずだ。 お買い得すぎだろ。 直人君にも似合いそうだし。 これ悩むまでもないんじゃないのか?」  興奮気味に加奈子に言う。 加奈子がいらないと言うなら俺がほしいぐらいだった。 しかし、 加奈子は難しい顔をくずさない。 俺の手に持っていた説明書を奪い取るとずらずらと書かれている小さな文字列の最後を指さす。 そこにはさらに小さな文字でこう書かれていた。
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