第1章

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 気の抜けるような空気音がなって電車の扉が開く。 長時間の移動で凝り固まった腰を動かしながら駅のホームに降りた。 目の前には一つだけの改札。 駅のホームを抜き抜ける風が冬の寒さを感じさせた。 切符を改札に通して外にでる。 駅舎の中にいた眠そうな目をした駅員と小さく会釈を交わす。  駅前は小さなロータリーになっていてバス停の看板は少し錆びている。 周りは山に囲まれていて紅葉が終わってしまったこの季節では寂しさを感じさせる。 「兄さん」  声を掛けられて振り返ると妹の加奈子が青い自動車から降りて手を振っていた。 手を挙げて答えると加奈子の車に乗り込む。
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