第1章

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「この店で手頃な値段で性能とデザインが良い物を出してもらいましょうか?」  あまりの突然の事に俺は一瞬呆然として身動きがとれなくなるがすぐに正気を取り戻して加奈子に駆け寄る。 「おいおい、 何しているんだよ!」 「何っておすすめの時計を見繕ってもらおうとしているだけじゃない」 「だけって。 お前」  女性店員の首はきっちり絞め上げられているらしく顔が青白くなってきている。 それでも笑顔を浮かべたままというのはプロ根性のたまものなのだろうか。 「時計を選びに来ていきなり人の首を絞める奴があるかよ」 「何言っているの。 クリスマス商戦の時期なのよ。 クリスマスプレゼントを買うのは戦いなの。 これぐらい当たり前よ」 「商戦っていうのは実際に戦うわけじゃねぇ」 「お客様、 今店長が時計をご紹介しますのでそちらの個室でお待ちいただけますか?」  にこやかな笑顔を崩さないまま女性店員が個室へと促す。 まるでこちらの態度に怒った様子はない。
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