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下瞼に少し力を入れて目を細め、悔しそうな表情をしているのが見えてちょっと嬉しくなる。手を伸ばして髪に触れると目を逸らさずに顔を赤くした。
「その次の週はクリスマスだから駄目ですしね」
「クリスマス?」
僕の言葉に首を傾げた星崎くんが答えてくれた。
「どこ行ってもカップルだらけで大変ですよ」
ああ、そういう事か。
パソコンから小さな音で流れている曲に被さって大粒の雨が窓を打つ音が聞こえる。
ガラスを叩く雨粒の模様って自然の造形のなかではかなり粗雑な方に入るな。もっときれいに見えれば雨の日も楽しいのに。
「雨脚が強くなってきた。晩御飯、どうする?」
フリーランスの僕と違い、彼は明日仕事のはずだ。
「雨だけど食べに行きませんか?」
「じゃあ出よう」
狭い玄関で「ちょっと肩貸して」って言って靴を履いた後、目が合った。
いつものように真直ぐに僕を見つめる視線に引っ張られてそのままキスをした。
この後何もしないよっていう、外でご飯を食べる時の、部屋の中でする今日最後のキス。
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