一章 動き出す時間

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「……というわけだが、信じてくれるか?」 「あなたたちが逆の立場だったら、信じるわけ?」 「何とも言えないな」  その後。フィレルは頼りないことこの上ないので、仕方なくロアがフィラ・フィアに一通り状況を説明した。  フィラ・フィアは首をかしげる。 「わたしは死んだわ、確かに死んだのよ。でも死んだと思ったら全く知らない所に蘇って、今はあれから4000年後です、なんて言われたってさあ……。確かにね、シエランディアもイグニシィンも聞いたことないわ。でもそこが異国だって可能性もあるの。その方がまだ信じられるけど……。わたし、何を信じればいいのかまるっきりわからないわ」  ロアはフィレルを睨んだ。 「責任取れよお前」 「え、無理」 「無理とかあっさり言うな馬鹿。全部貴様のせいだぞ」 「でも絵心師は取り出すだけで戻すのは……」 「――うるさい!」  声に振り向くと、フィラ・フィアが思い切り顔をしかめていた。 「ただでさえ状況に頭が追い付かないのにさ、その上喧嘩までしないでよね! ええフィレル、あんたは確かに悪いわよ! というか極悪人! 犯罪者! 禁忌破りの大罪人! でもさあ……」  悪口雑言の数々に呆然とするフィレルを尻目に、フィラ・フィアはロアをも睨みつけた。 「ロアだっけ? あんたも悪いわよ! 起こってしまったことはもう取り戻せないの! それがわかってるなら文句言うのやめてよね! フィレルに文句言うよりかは解決策話し合う方が有用じゃないの? ああっ、もうっ! 二人とも、信っじられないわ!」 「……済まない」 「わかったなら考える! ほら、さっさとしてよねもう!」 「…………」  フィラ・フィアは早くこの状況をなんとかしたいらしい。そりゃ、誰だってこんな状況になったらそう思うだろう。 (兄上、助けて!)  苦しいときのロア頼み、もとい兄頼み、つまり他力本願を本気で実践せんと、フィレルは汗を流しながらも願っていた。  そして奇跡は起こるべくして起こる。 「――やあ、フィレル、ロア。そんなところでどうしたんだい。その女の子は?」 「……兄上」  没落貴族イグニシィン当主、ファレル・イグニシィンが。ひょっこりやってきた。   ▼
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