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「……というわけだが、信じてくれるか?」
「あなたたちが逆の立場だったら、信じるわけ?」
「何とも言えないな」
その後。フィレルは頼りないことこの上ないので、仕方なくロアがフィラ・フィアに一通り状況を説明した。
フィラ・フィアは首をかしげる。
「わたしは死んだわ、確かに死んだのよ。でも死んだと思ったら全く知らない所に蘇って、今はあれから4000年後です、なんて言われたってさあ……。確かにね、シエランディアもイグニシィンも聞いたことないわ。でもそこが異国だって可能性もあるの。その方がまだ信じられるけど……。わたし、何を信じればいいのかまるっきりわからないわ」
ロアはフィレルを睨んだ。
「責任取れよお前」
「え、無理」
「無理とかあっさり言うな馬鹿。全部貴様のせいだぞ」
「でも絵心師は取り出すだけで戻すのは……」
「――うるさい!」
声に振り向くと、フィラ・フィアが思い切り顔をしかめていた。
「ただでさえ状況に頭が追い付かないのにさ、その上喧嘩までしないでよね! ええフィレル、あんたは確かに悪いわよ! というか極悪人! 犯罪者! 禁忌破りの大罪人! でもさあ……」
悪口雑言の数々に呆然とするフィレルを尻目に、フィラ・フィアはロアをも睨みつけた。
「ロアだっけ? あんたも悪いわよ! 起こってしまったことはもう取り戻せないの! それがわかってるなら文句言うのやめてよね! フィレルに文句言うよりかは解決策話し合う方が有用じゃないの? ああっ、もうっ! 二人とも、信っじられないわ!」
「……済まない」
「わかったなら考える! ほら、さっさとしてよねもう!」
「…………」
フィラ・フィアは早くこの状況をなんとかしたいらしい。そりゃ、誰だってこんな状況になったらそう思うだろう。
(兄上、助けて!)
苦しいときのロア頼み、もとい兄頼み、つまり他力本願を本気で実践せんと、フィレルは汗を流しながらも願っていた。
そして奇跡は起こるべくして起こる。
「――やあ、フィレル、ロア。そんなところでどうしたんだい。その女の子は?」
「……兄上」
没落貴族イグニシィン当主、ファレル・イグニシィンが。ひょっこりやってきた。
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