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「……なるほどねぇ」
話をすべて聞き終わると、ファレルは困ったように微笑んだ。
「事態は理解した、けど……。そもそもフィレル、君はどうして彼女を呼び出したりしたのかな?」
「ロアが今日、伝説について教えてくれたの。でさあ兄上。僕、帰ってからフィラ・フィアの絵を見て、実在する人物か確かめたくなったんだよね。実在しない人物は実体化できないはずだもん」
「……ただの好奇心の結果かな?」
「そうだよ。でもまさかこんなになるなんて思ってもなかったや……。本当にごめん」
「ハア…………」
ファレルはもう笑うしかない。彼はフィレルはやんちゃ坊主でトラブルメーカーな弟だとは前々から理解していた。しかしまさか興味や好奇心一つであっさり禁忌を破るとは、流石の彼も予想だにしていなかった。
「神様が笑うよ、まったく……。人間はどこまで際限なしなのかってさ。いくら興味や好奇心が強いからって、そうあっさり禁忌を破ってもいいものかい? 今回は僕でも弁護しきれないよ。彼女のために自分がどう責任を取るのかしっかり考えなさい。しかも君が呼び出したのは、とうの昔に眠りについたはずのあの『封神のフィラ・フィア』なのだからね」
「……はぁい」
うなだれるフィレルを尻目に、フィラ・フィアはファレルの言葉の一つにぴくりと反応した。
「神様が笑うよ」。神様。「荒ぶる神々」。「崇高たる舞神」。封神のフィラ・フィア。
――封神の七雄。
ちょっとした言葉から彼女は混乱から抜けだし、走馬灯のように思い出す。かつての使命、秘めた思いを。
そう、確かに自分は遠い昔、「荒ぶる神々」を封じんがために故郷を飛び出し、戦って、戦って、戦って……そして失った。
シルークを、ユーリオを、ユレイオを、レ・ラウィを。
――そして、自分の命を。
戦神ゼウデラとの戦いで。まだ封じていない神々も残っていたのに。
あの日彼女たちの旅は終わり、「荒ぶる神々」は今もそのまま……?
突如見知らぬ世界でよみがえり、右も左もわからず右往左往していたフィラ・フィア。
それでも記憶はあるから。悲しくも楽しかった、喜びもあった、あの、
――戦いの日々の記憶が。
そして彼女は封神のフィラ・フィア。ゆえに知らなければならないことがある。
「教えて、ほしいの」
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