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その身体を鬱陶しそうに押し返しながらもロアは返す。
「勘違いするな、お前のためじゃない。お前がその先で死ぬなんてことがあったら、ファレル様が悲しむだろうと思ってのことだ。他意は無いしお前のことを考えて取った行動では無い」
「素直じゃないなあ」
「事実だっ!」
それはさておき、とフィラ・フィアはこの城の最高責任者たるファレルの方を見た。
「ええと、あなたが何も言わないままに話を進めちゃったわけだけど、事後承諾ってことでいいかしら? わたしだって信じたくないの、今が4000後の未来だって。それでも……その未来にさえ過去の禍根が残っているのなら、わたしはそれを刈り取らなくちゃならない。そのための同行者としてあなたの大切な人を選んだのは申し訳ないわ。でも、わたしは封神のフィラ・フィアだから」
ファレルは強くうなずいた。
「自分がしたことへの責任は取らせる。僕は甘いばかりの兄さんじゃないからね……。約束してくれるかい。この旅はおそらく過酷になる。その中で誰かが死ぬかもしれない。けれど誰も死なせないでほしい。フィレルは弟だしもちろん、ロアだって血がつながっているわけじゃないけど大切な家族さ。時間がかかってもいいから、安全第一に進んでほしいんだよ。約束してくれるかい?」
その青い瞳には温かさと慈愛を宿し。
もちろんよ、とフィラ・フィアは笑った。
「喪失の痛みは誰よりも知ってる……。今回だけは、今回だけは! 誰も死なせやしないんだからね!」
決意の炎の後ろには、凍えきった喪失の闇。
今度こそ、守り切る。最後まで、戦いぬく。
この新しい仲間たちとともに!
「よろしくね、フィレル、ロア!」
フィラ・フィアがそう口にした瞬間、4000年前に止まっていた時間は動きだし――。
新しい時代の幕が、上がった。
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