プロローグ 戦神の宴

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――そして今、わたしはここに在る!  意識を現在に戻し、フィラ・フィアは「神封じの舞」を舞い始める。 「わたしたちは一生懸命に生きているんだ! だからもう、見守るだけの神々が! わたしたちにいちいち干渉なんてしないでっ!」  長い長い戦いの中で生き残ってくれた三人の仲間に目配せをして。 「放埒をやめて、おとなしく封じられなさいっ!」  神封じのステップを早く、早く踏み、式の作成に急ぐ。彼女の足が動くたび、その足元に光り輝く魔法陣が形成されていく。  それが引き金となって白獅子ラウラが声高く吠え、戦いが再開される。 「貴様の相手はこの私だっ!」  ラウラとフィラ・フィアの間に割って入ったのは、「天駆ける剣神」女剣士ヴィンセント。 「ならばゼウデラっ! 幻影の太刀、受けてみろっ!」 〈フィラ・フィアは、傷つけさせない〉  反対側からは「自在の魔神」魔素使(まそし)エルステッドと、「白蝶の死神」死霊使いシルークがゼウデラを迎え撃つ。  そしてフィラ・フィアは――! 「はあぁあああっ!」  式の最終段階に取り掛かる! 「わたしは……封じなくちゃならないんだからっ!」  戦いの音が、彼女を駆りたてる。失いたくない大切なものを、焼き付けるように思い出させる。 「この世界に、人間だけの居場所を……わたしは創るっ!」  瞳に宿る炎は超新星の如く燃えて。  カツンと彼女のサンダルが最後の音を鳴らした。  そして式は発動する。 「封じられよ! 悪夢の戦神ゼウデ――」   彼女が勝利を確信しかけた、とき。 「――無駄だっ!」   放たれた死の刃。 〈フィラ・フィアっ!〉  目の前に投げ出された誰かの背中。 「――――ラ……?」  白い蝶が突如、フィラ・フィアの視界を埋め尽くした。 「えっ……?」  勝利を確信した瞬間に、ゼウデラの必殺の刃がフィラ・フィアに向かって放たれたのが見えた。  あれは食らったら生き延びられない。近くに守ってくれそうな仲間もいない。ああ、死ぬんだな。あと一歩が届かずに。  ……そう、今わの際に思ったのに――。 ――白い蝶。  死ぬはずだったフィラ・フィアは生きている。  どうして? それは――
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