3人が本棚に入れています
本棚に追加
-Still world is beautiful それでも世界は美しい-
01
「そっか。さーちゃんは金井女子に行くんだ」
「うん」
「女子中なんだよな?さやは頭いいもんな」
「うん」
「ケンも引っ越すんだろ?」
「ああ。美命の体調を考えて、病院と親父の職場に近い家に引っ越すんだと」
「みんなバラバラだな」
「ジュンピ寂しいの?」
「少し」
「ジュンが素直だなんて、珍しいこともあるもんだな」
「最後くらいいいだろ?」
「最後じゃないよ。また、会えるよ。だって私達友達じゃない」
「ま、ジュンもサヤも引っ越しはしないし、俺も引っ越すって言ってもそんなに遠くない。だからさ、簡単にはいかないかもしれないけど会えるって」
「そうだな。なぁ。俺達次に出会った時は、お互いをより解り合えるよな?」
「そりゃそうだろ?」
「今よりも大人になってるんだし」
「だったらさ、約束しようぜ。俺達。どんな時でも────いるって」
「当たり前でしょ?」
「今更何言ってるんだよジュン」
これが、小学校卒業の日の出来事。一番仲が良かった友人との別れ。そして私は私立の女子中に入学した。
「oh!my daughter。素敵な制服姿だねー!!」
私が制服を着て玄関にある姿見で再三確認していると、陽気な父がやって来て、大きく手を広げて私を抱き締めた。折角整えた頭をぐじゃぐじゃされてかなり腹立たしく、鬱陶しい。張り倒してやろうかとも思ったけど、母がやって来たので、軽く押し退けるくらいで許してやることにした。
「おはようお母さん。どうかな?」
「うむ。似合っているぞ紗綾。君は今、世界一美しい中学生だ。胸を張って登校するといい」
母は父とは違い優しく髪を撫でる。綺麗に髪を溶かしてくれた。口調は少し厳しめだが、それは己の行いに自信を持っている証拠でもあり、また実際に清く正しくかっこいい。父とはまるで正反対の母が私は好きだ。そんな母に少しでも今日認められた気がした。それがとても嬉しかった。
「うん。お母さん。ありがとう。行ってきます」
私は胸を張って玄関のドアを開けてこれから通う『金井女子学園 中東部』へ入学する。
最初のコメントを投稿しよう!