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「気のせいかな?いま、エリカにしか行ってきますと言わなかったな」
「……さあ。どうだろう」
誰も知り合いの居ない中学へ入学した私はかなり緊張していた。ゼロからのスタート。小学校に入学したときはどうだっただろうか?これほど緊張しただろうか?
否、多分していなかった。あまり何も考えていなかったんだと思う。ただ小学校に上がって、ランドセルを背負っているだけで胸が踊っていたから。
今は違った。仲の良かった友達は居ないし、助けてくれる人もいない。自分で選んだのになんだか心が折れそうになる。
特に今まで気にしていなかったけど、私の容姿が珍しいらしく周りからはヒソヒソとそこかしこから聞こえてくる。
「あの子って外国人かしら?」
「でも名前は秋瀬紗綾って」
「紗綾なら外国人でもありそうな名前よ」
小学校の時はみんな堂々と聞いてきてくれたからスパッと答えられた。それに一年生の時に聞いてくれたから六年生になっている頃は特に何かを聞かれることは全くなかった。
中学になると多感になり気になるのは当然と言えば当然なのだろう。特に女子中だし、はみ出てしまえばたちまち居場所をなくしてしまう。
そんな中でも私に友人が出来る日がやって来る。クラスが打ち解けてきて、皆仲良くなり始めた時期。初めての席替え。
「あーきーせーさーん」
彼女は『聖未来』とても明るくて人懐っこい性格をしていた。クラスでは勿論、学年からも既に有名人で人気者だった。
誰に対しても明るく接することが出来る人だなとは思ってはいたが、まさか自分に対してもそうだとは思わなかったから驚いたのが正直な感想だ。だから
「なに。聖さん」
と返したときに声が裏返ってしまったのは恥ずかしかったが彼女はそんなこと気にもしていないようだった。
「一緒に部活見に行こうよ」
「私と?」
「そう。行こうよ」
そう言うと彼女は私の手を引っ張った。ちょっと強引な人だなと思ったけど、それでも私は嬉しかった。金井女子に入ってからはこんな風に明るく話しかけてくれる人はいなかったし。だから私はそんな強引な彼女の行動が嬉しかった。
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