第二章 私達の世界 -紗綾の世界-

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最近秋瀬紗綾が変わった。彼女の周りにはこの間から始まった選択科目の授業で一緒になった四組の連中が集まってきている。今も十分暗いけど前よりは口数は多くなった気がする。 一条真奈美はクラスメートである秋瀬紗綾事の事を気に掛けていた。何でも持っていそうなくせして、不満だらけの、全てを諦めた顔をしている。紗綾は自分と同じく学年一の頭脳を持っている。容姿に至っては学年一のものだろう。否、学校一と言っても良い容姿をしている。しかし溜め息ばかり。全てを、とは言わないが、多くを得ているくせに、諦めている表情。それが真奈美は貴き者独特のものだと思っていた。 自分と同じ鴻鶴で、周りの燕雀ではないのだと。選民意識を持った人間だと思っていた。 しかし、ここ最近では紗綾は一人で居ることが殆ど無くなった。 紗綾とつるむ四組の連中はどうにも喧しい。特に女子二名。 腰まで伸びた黒髪の女は『望月愛弓』と言いこの春からこの街に引っ越してきたらしく、かなり元気がよかった。もう一人は『矢切奏』。彼女は頭がイカレているのか、よく分からない言葉を並べている。スキル 、センス、アビリティ。その言葉がどういう意味なのかはわかるが、それをこの女がどういう意図で使っているのかがわからなかった。 ただ一つ言えることは、この『矢切奏』が所謂“中二病”であるということ。だから矢切奏がどのような意図でそんな言葉を並べているのかは理解できないし、理解する必要もないし、理解などする気になれなかった。 それを呆れたように頭を抱える大柄の男子生徒とその隣でいつも笑っている真っ白な男子(?)生徒。 この真っ白な男子生徒(恐らく男)は明らかに日本人離れした外見をしていた。秋瀬と良く似た外見。でもなんだか少し違う。特に異彩を放つは、その真紅の眼だった。 普通の燕雀共には彼が何なのか理解など出来ないだろうが、自分には出来た。彼はアルビノだということ。 しかし、外見的に日本人離れしているのは秋瀬と同じだが、彼は彼女とは違いとても明るい生徒のようだった。
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