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「ふーん」
私の周りを四組の望月さんと矢切さんがわーわー騒いで、チャイムが鳴る少し前に潤がやって来て二人を連れて帰った。
そして、私の席で騒いでいた二人が帰って後ろから僅かに聞こえた声にようやく返事をする。
「騒がしくして、ご免なさい」
「別にいいわよ。ただ」
そこで言葉を切る一条さん。私が首を傾げると一条さんは窓の外を見て
「貴女も燕雀なのかしら?」
その言葉の意味がわからないでいると一条さんはフフッと笑って教科書を開き始めた。その一条さんの表情は冷たく、ただただ機械的にそこに書いているものを『眼』というソフトから『頭』というハードに読み込んでいるようだった。彼女の表情に、感情は込められてはいなかった。
そんな彼女を見ていると、彼女は私に眼を向けることもなく、また機械的に熱の無い言葉を並べた。
「あなたもお友達が出来たみたいでよかったじゃない。あの時手を取ってくれなかったのはちょっと寂しいけど」
友達。あの人達が?ただ私の所へやって来ていつも一方的に騒いで時間が来たら呆れ顔で水無月くんが連れていくあの人達が。それに寂しいって。あまり感情を露にしない彼女からは想像がつかなかったから少し驚いた。しかし、
「あの人達の手も取った訳じゃないわ」
そう答えた自分の言葉にも熱はなく、どこまでも冷たかったと思う。私達がそんな会話と呼ぶには感情の籠らないやり取りをしていると、視線を感じ、そちらに注意を向けた。花咲さんがこちらを観察していた。彼女はどうも私達二人のことが気に入らないらしく、またこのクラスではかなり発言力の強い生徒だ。私は高校ではもう目立ちたくない。一条さんに習って、授業の準備をすることにした。
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