第二章 私達の世界 -紗綾の世界-

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「あーあ。もう少しで秋瀬さんと仲良く出来んのになー。いーっつもだーれかさんが邪魔に入るから」 「ホントホント。だーれかさんがいーっつも拳骨して首根っこ捕まえて拐っていく」 放課後、いつも通り図書室に行こうとすると『秋瀬さん発見!』と望月愛弓と矢切奏が後ろから大きな声を挙げて私を追いかけてきた。それが私はちょっと怖くてまたあの空き教室へと来てしまう。 今はわざとらしく、えんえんと泣く振りをして、それを溜め息をつきながら頭を抱えているかつて同じ小学校に通っていた彼の姿と、相変わらずにこにこしている真っ白な彼がそこにいた。 「お前等なー頼むから大人しくしてくれ。選択の授業では多少眼を瞑るが、それ以外で一組に行って騒ぐのはやめてくれ。な?」 潤は友人であるこの二人に懇願するが、二人は話を聞いている風にない。そんな二人を見てまた、溜め息をついていた。昔と少し印象の違う潤だが、それでも昔の面影を残している潤と違い自分はどこまでも変わってしまったような気がして心底落胆した。
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