第二章 私達の世界 -紗綾の世界-

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選択科目が始まって二週間が過ぎた。週に二回、計四時間あるこの授業は私を含め十二名の生徒しか受けていない不人気な授業。それも一人は休学しており、たまにしか姿を見せない。 内容も先生の理屈を聞いて、それに対しての意見を発表させられる物だ。時にはお代を出されてそれを一対一で議論しあったりする。受験には全く関係ないが、恐らく社会では必要な科目だと最近は思うようにもなった。 そして、この授業の時だけのクラスには少し馴染んできた気がする。それはきっと彼女達のお陰なんだと思う。私は一歩踏み出してみようかなと思うようになっていた。 「へ?」 「今なんて言ったん?」 「だから!その……一緒に帰りましょ?」 放課後いつものように彼女達とお話をしているときに、ほんの少しの勇気を出して自分から話してみた。 「いーやったー!!!ついにこの日が来たわよアユ!!!」 「長かったなー。ようやく秋瀬さんが心開いてくれたなカナっち」 二人は手を繋いでピョンピョンと跳ねていた。そんなにも嬉しがるなんて思ってもいなかったから、二人を見て私も少し嬉しくなった。その二人を見ている顔が多分緩んでいたんだと思う。二人の後ろにいた潤が私を見て少し笑っていた。 「なに?」 「いや、昔みたいに笑えるようになったんじゃねーかと思っただけだ」 『へへっ』と笑う彼の顔は成長こそしていれど、昔の良く知るヤンチャでワンパクな潤だった。私はそれが少し照れ臭くて 「放っておいてよ」 と、そっぽを向いてしまう。またそんな私が可笑しかったのだろう。潤は笑っていた。 「素直じゃなくなったなーお前」 「そう言えば昔ね?よくジュンちゃんは秋瀬さんのお話ししてくれてたんだぁ」 「あっ!ばかっ!!お前!!」 潤の隣にいる光城くんが暴露話を持ち出した。それを聞いた望月さんと矢切さんはまた嬉々として潤に詰め寄っていた。
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