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「やーっぱ秋瀬さんのこと好きやったんやんか」
「ナイス暴露よ!ヒカリ!」
「いえいえ。他にも─」
「言わなくていい」
潤は光城くんの頭に手刀をお見舞いした。光城くんは『あイタタ』と頭を押さえて悪戯が失敗した子供のように、ペロッと舌を出した。
「なんか、お仕置きの力加減が私とアユよりも優しくない?」
不満そうに矢切さんがそう言った。確かにそう見える。あまり体が丈夫そうでない彼を望月さんや矢切さんと同じように扱わないのは彼なりの優しさなのだろう。そう言えば思い出した。
「体の弱い、大切な友達が居るって言ってたけど、光城君のことだったのね」
それを聞いた光城くんはいつものようにニコニコしているかと思えば違った。固まったまま眼を丸くしている。その眼は燃えるような真紅の眼。焼き尽くすような真紅の眼。私とは真逆の色。そして潤の方を見ていつもより優しい表情で笑うのだった。
「まぁそうだよ。健と違って秋瀬は会ったこと無かったもんな」
健。とは『天満 健』のことだろう。現在彼は隣の二組の生徒だが、学校へ来ることは殆どないらしい。休学の届けを出しており、授業はレポートとテストを受けることで免除されているとか。その天満 健は光城くんには会ったことがあるらしいことは今初めて知った。まぁ、確かに彼等と行動することは多かったが、習い事もあったし、健と潤程の時間は無かったから、光城くんに会えるチャンスが健よりも無かったのだから仕方が無い。でもこうして同じ高校に通っているのは、何とも不思議な感じだ。
「ちょっとー。三人だけで昔話せんといてー。カナっち泣いてるやん」
「いや、泣いてないから。泣いてるのアユの方だから」
『泣いてませーん』『泣いてますー』と彼女達は全く意味の無い諍いを始めた。
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