賭けの代償

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俺は拍子抜けしていた。 小森は俺との賭けに勝ったはずだ。 なのに、そのことに少しも触れようとしないなんて……。 もしかして、俺との賭け、忘れちまってんのか? それなら、それで…… 俺としては……都合がいいんだけど。 腑に落ちないながらも、この時は紅屋の件でヘルプを頼まれ、その場はやり過ごしてしまい、そのままになっていた。 そして、後日――― 社内ミーティング後、さらに磨きをかけたデザイン案を、いよいよ四葉にお披露目する日となった。 この日は朝からどこか落ち着かなかった。 いつもはどっしり構えているはずの杉浦さんも心なしか表情が硬い。 もっとも、彼女にはクライアントの『大手四葉』に対する緊張とは別の緊張感があったことは…… 俺には知る由もなかったのだけれど。 今思えば、眞辺さんはそのことにいち早く気付いていたのか、いつも以上に『いつも通り』を装っていた。
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