今川治部大輔義元

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「遠江の乱は収まったって言ったが河東はどうなったんだ?」 俺の問いに雪斎は俺をにらめつけこう言った。 「お主の師としてつけられた時に今川の領土がどこまであるか教えたはずなのだが…聞いておらんかったか。」 「あっ…えーとその。」 (しまった。やらかした…そんな話して居た気がするが思い出せねぇ。まだ母さんの温もりを恋しがって居て話半分だったようなはず。せっかく授業の話から離れたと思ったのに!くそっ、なんとか思い出せねぇかな。) そう思いながら思いだそうとうんうん唸ってる俺を見て呆れたように溜息を吐いた後 「このたわけが。良いかもう一度その頭に叩き込んでおけ。河東は北条に奪われたままだ。義元様は河東を奪い返さんと何回か軍を派遣したが全て敗北した。それほどに氏綱は北条は強かった。それだけではない。武田が北条と和睦したのだ。」 「は?和睦?だって今川と武田が和睦したのをよく思わなかった北条が攻めて来たって話だよな。なんで和睦なんて。」 今日は理解できないことだらけだ。しかしそれと同時にこの理解できなさが戦国時代というものだと理解した。 「武田が信濃佐久郡に侵攻したからだ。佐久郡の領主は山内上杉を頼っている者が多い。その佐久郡に侵攻した為、山内上杉との仲が悪くなりその分北条との仲が修復されて言ったのだ。」 「一応聞くがそれだけじゃないよな?」 「ほうよく分かったな。これは今川家中での問題だが義元様の家督継承に尽力した瀬名陸奥守氏貞が亡くなったのだが、死因は玄広恵探の亡霊によるものだそうだ。」 「亡霊だって?」 なんか急にオカルトな話題が出てきたぞ? 「そうだ。俄かには信じられんが氏貞の小姓が寝所で氏貞の苦しそうな声が聞こえ近づくと氏貞が『あの所業は全て義元様の命でワシは従っただけじゃ…止めろ!来るな!来るなっ』と言ったあと首がうなだれ口からは血が出て来たそうな。直ぐに侍医を呼んだが手遅れだった。因みにあの所業と言うのは玄広恵探に組した者の一族郎等を容赦無く処刑し逃げた者は隈なく探しこれも処刑した事だろう。」 「そうなのか。だけどいくらなんでもやり過ぎじゃないか?」 「禍根を断つには仕方ない事だ。」 仇討ちを恐れての徹底的な弾圧…確かに権力を安定させる為には必要だがそこまで必要だったのか。そこに居なかった俺にはわからない。雪斎が言うように仕方ない事だと割り切るしかないのだろう。
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