近習

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「父上お久しゅうございます。お呼び出しと聞き参りましたが一体どのような御用件で私をお呼びなさったのですか?」 義元の元へ来た俺は下座にてうやうやとお辞儀した後要件を聞いた。 「実の子に中々会えず寂しうなり呼んだ。という理由ではいかんか?」 「悪ふざけはおやめくだされ父上。」 義元は笑いながらそう言ったのに対し俺はまじめに返した。 「ふむ。つまらんのぉ。父の前で硬くならず父上~と甘えても良いのだぞ?」 「用がないのなら呼び出した理由が息子に会えず寂しくなったからだと雪斎に伝えに行きますよ。」 義元が父上~とふざけて言うのにイラついた俺は雪斎の名を出し脅した。そんな脅しが効いたのか義元は少し慌てて 「分かった。分かったから待つのじゃ。ちゃんと用はある。そのようなことでお主を呼んだら雪斎に何を言われるかわからん。 前にただ会いたいがためにお主を呼ぼうと使いを出そうとしたら雪斎に『義元様は今川の当主にあらせられますよ?仕事を投げ出し息子を優先するなど家臣に示しがつきません。そもそもお主は……』と長々と説教されてしまってな。 全くあの男は硬すぎるのじゃ。息子に会いたいと思うのは親であるなら当然であろうそれをあの鬼畜坊主め。」 と言った。途中から雪斎に対する愚痴になってるがあの人、父上に対しても容赦なかったのか。 というか元は父上の師匠だったなあの人。 しばらく雪斎のことを愚痴ったあと義元は 「すまんすまん。さて用事というのはな。お主に近習として譜代の家臣の子を何人かつけようと思ってな。誰をつけるのか選んで居たのだがようやく決まったからお主を呼んだのだ。」 「近習?そんなの初耳ですが。」 「なに。お主に対する贈り物よ。 わしは近習をつけるにはまだ幼いと思って居たがあの牢人の件でお主が色々動き回ったと聞いてな。 あとはお主が才あるものは地位に関係無く登用すると決めたと聞いたぞ。だがお主だけではダメだ。そのための近習だ。今のうちにお主に従ってくれる者を得た方が良いと思ったのだ。これもワシがお主を思うが故だ。どうか受け取ってくれ。」 勘助のことはやはり耳に入って居たようだ。というか雪斎が耳に入れたのだろう。しかし今まで義元は仕方ないにしても当主の仕事を優先している冷酷な男だと思って居たが違かった。ここまで俺のことを思ってくれて居たのだ。 「断るはずもありません。ありがたく頂戴いたします。」
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