近習

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「うむ。そのような返事を聞けて。ワシは嬉しいぞ。ではお主の近習となる者を呼ぶ入って参れ。」 そう言い義元は手を叩いた。手を叩いて呼ぶとかドラマとかでお偉いさんがやってるの見たなぁ。しかし一体どんな奴が来るのだろうか。内心ドキドキしている。と戸が開き中から四人の少年が中に入って来た。いずれも俺に近い歳であることがわかった。彼らは俺に平伏した後1人ずつ名乗った。 「朝比奈備中守泰能が嫡男朝比奈左京亮にございます。以後お見知り置きを。」 「由比美作守正信が嫡男由比源左衛門にございます。以後お見知り置きを。」 「蒲原宮内省輔氏徳が嫡男蒲原三郎左衛門にございます。以後お見知り置きを。」 「小原肥前守鎮実が嫡男三浦右衛門にございます。以後お見知り置きを。」 朝比奈備中守泰能というのは掛川朝比奈の当主であり今川家を支える譜代の筆頭格であり雪斎からも一目置いているらしい。由比美作守正信は駿河先方衆由比家の人間であり蒲原宮内省輔氏徳は今川義元の叔父つまり蒲原家は一門衆に属しているということになる。 四人の挨拶が終わったところで一つ疑問に思った。三浦って苗字なのに父の苗字が小原ということである。 「父上。これはどういうことにございますか?」 「それはな。父の肥前守は三河の代官なのだがお主に近づかんと考えたのか右衛門を正俊の養子とするよう頼んだようでな。正俊も困り果てた末にこれを受けたのだ。だから三浦右衛門なのだ。」 なるほど地位の低い父親の私利私欲で養子に送られたということか。正俊も困っただろうがそれ以上に右衛門が可哀想だ。そう思っていたら朝比奈左京亮が 「全く意地汚き所業にございます。そのようなことをしてまで自らの地位を高めたいとは。」 と嘲るように言った。それに対し右衛門が 「私が内匠助殿の養子となることが小原のそして今川の為となるなら受け入れまする。むしろそのような行いを嘲る左京亮殿はさぞ甘やかされたのでしょう。このような方が今川を支える掛川朝比奈の当主になる可能性があるとは。今から心配にございます。」 と返した。この挑発に左京亮は 「貴様!」 と右衛門に?みかかろうとしたがそれを由比源左衛門が 「殿と若殿の前で何をやってるのだお主らは!申し訳ございませんこの者ら全くそりが合わぬのでございます。どうかお許しください。」 二人を叱責し俺と父義元に謝罪した。
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