近習

5/6
前へ
/241ページ
次へ
さて義元の追撃を受けていよいよ追い詰められた三人は泣きそうになっていた。いかに一門の家の者でも譜代の者でも所詮は子供。 しかも義元や俺の目の前で喧嘩したというのはあり得ないことだ。 そのことも相まって右衛門と左京亮は震えていた。そんな中源左衛門が三人を庇った。 「このような場で喧嘩をしたというのは許されるべきことではありません。三郎左衛門の態度も褒められた者ではありません。しかし彼らの今川に対する忠誠心は間違いない者です。それだけは信じてくだされ。どうか。」 源左衛門が健気過ぎて涙が出て来た。まぁ源左衛門に言われなくても許して近習に迎えるつもりではあったが源左衛門の顔を立てるため 「源左衛門がそう言うのであるならそうなのだろう。よし分かった。左京亮、右衛門。これ以降場を弁えず喧嘩をすることを止めよ。喧嘩をするなとは言わん。ソリが合わぬというのは誰にでもあるからな。だが場を弁えよ。そして三郎左衛門は喧嘩に出くわしたらそれを止めるよう動け。源左衛門は源左衛門で自分一人でなんとかしようとするのではなく私や父上を頼れ。一人で抱え込んでいかん。これを守れるなら近習となることを受け入れたい。良いですか?父上。」 俺はそう彼らに声をかけ義元に答えを聞いた。義元は三人に 「此度のこと本来は許されることでは無いが源左衛門や龍王丸がそう言うなら認めよう。3名ともこれを機に心を新たにし龍王丸に仕え今川に忠誠を誓うのだ。良いな?」 「「「承知いたしました!」」」 三人は自らの行いを恥じ改めることを誓う誓書を書いた。 こうして四人は俺の近習として仕えることになった。いやぁ一時はどうなることかと思ったがなんとかなってよかった。 しかしこれで三人は源左衛門に頭が上がらなくなるな。少し不安ではあるがこれからが楽しみだと思いながら自室に戻って行った。 余談だが義元と俺の目の前で喧嘩したことはこの場にいた者以外には話さないということにした。子供同士の喧嘩が家臣間の対立にまで発展することを避けるためである。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

700人が本棚に入れています
本棚に追加