山本勘助

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山本勘助は庵原館にて不満そうな顔をしていた。 (いつになったら俺は自分の腕を披露できるのか。) 勘助は士官を求めて駿河に来てからの事を思い返していた。 (牢人のままここに留まり五年は経った。 俺は士官を求め駿河にやって来て庵原忠胤殿の館で世話になることになった。 その後朝比奈駿河守殿を通し士官を願った。しかし義元の奴は俺の容姿を嫌ったのかあからさまに嫌な顔をしていた。 まぁ隻眼で足も片方動かず杖をついているような不気味な容姿を嫌わない方がおかしいのは理解出来たから俺は兵法を極め城攻めや築城に心得があると自分の能力について語った。 しかし小物すら持たない俺の言うことなぞほとんどの者が真に受けなかった。 庵原殿や駿河守殿が俺を評価しとりあえず登用してみてはどうかと言っていただけたが結局義元は認めず俺は牢人のままとなった。 くそっ今思い出してもあの野郎の見下すような冷たい目線が気に食わん! しかしこのままここでくすぶってるわけにはいかない。) 「潮時か…」 そう呟いた時遠くから声が聞こえて来た。最初は忠胤殿かと思ったが違う声も聞こえて来る。どうやら子供の声のようだ。注意深く聞いてみると 「龍王丸様!お待ちください。勝手に行ってはいけません。せめて義元様の許可を取ってからでも…」 「喧しいぞ忠胤! おい誰かおるか?おるなら返事せい!」 随分偉そうな子供だなぁ出るのも面倒だとは思ったが暇を潰すのにはちょうど良いかと外に出た。 「おう居るがお前誰だ?随分偉そうだが」 怠そうにそう言うと忠胤殿が顔を青くして 「お、お、お前ですと?勘助殿無礼ですぞ!この方は今川家嫡男今川龍王丸様なのですぞ!」 「まぁずっと館でくすぶっておったみたいだから私の事を知らんのも無理はないが噂に違わぬ不気味な姿だな。」 (この子供が龍王丸だと?いや嫡男が生まれたとは聞いていたが俺には関係ないと流しちまった。しかしここで龍王丸様に気に入られればきっと今川家に士官できるはずだ。ここに来て運が回って来たか?) 龍王丸の登場に驚きながら必死に頭を回転させた勘助は龍王丸に尋ねた。 「まさか龍王丸様だとは知りませんでしたご無礼をお許しください。で何の用でこんなとこに?」 それに対し龍王丸はこう答えた 「お主のホラとやらに興味があってな色々聞かせてくれんか?」
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